Daydreaming in Brookline, MA

アメリカであえて私立高校を選ぶ

1 はじめに

こんにちは。MA州Brookline在住の きょうす です。

アメリカでは高校まで義務教育なので、公立高校を選べば基本は学費無料です。一方、アメリカの私立高校は授業料が非常に高額なところが多く、それに見合ったよりきめ細かくレベルの高い教育が受けられそうです。

うちの娘は自宅から通えそうな範囲で私立高校を一つ決めて受験し、もし受からなかったら地元の公立高校へ行く覚悟を決めていました(全寮制は考えていませんでした)。幸いなことに先日、その私立高校からの合格通知が来たため、ブログのエントリーに記録しておくことにします。

2 アメリカで私立高校を選ぶ意味

まずは私立高校を選ぶデメリットから。最初に来るのはもちろん高額な学費です。娘の合格した高校は学費の年額が5万5千ドルもします。一見、年収かと思うような金額で、一般エンジニアの私の給料ではとても全額支払うことはできません。

我が家の場合、住んでいるBrooklineにある唯一の公立高校はマサチューセッツでトップ5(公立のみ)に入るBrookline High Schoolです。ここなら受験なしで無償で行けるのに、わざわざ授業料を支払ってまで私立校を選ぶのはもったいない気もします。良い公立学校の授業料はプレミアム価格のアパート家賃に半ば含まれているようなものなのですから。

一方で、もちろん私立高校を選ぶ意味はあります。質の高い教授陣から質の高い授業が受けられること、周りの子達が粒ぞろい(学業レベルが同程度であるという意味で)であること、きめ細かい進路指導が受けられること、施設や設備が充実していること、などなど。教育は最も効果的な投資なので、多少無理をしてでも私立校に子供を行かせたい家庭は少なくないと思います。

私達の場合、アメリカの高校や大学に対して全く無知であり、こちらの大学に進むために効果的な受験準備をアドバイスすることができないため、その点を私立高校の手厚い指導に期待しているという事情もあります。

日本でもそうでしょうが、裕福な家庭では子供が小さいうちからいろいろな習い事をさせて勉強の習慣をつけ、将来に向けて有利な私立校にいれようとする傾向があります。こうやって社会階級が固定化されていくわけですね。移民としてアメリカに来ている勤勉なアジア系の家庭では、これに何とか食い込もうと熱心に教育するわけです。

3 高額な学費をどうするか

いくら良い学校とはいえ、我が家では年間$55Kは出せないので、Financial Aid(奨学金)にアプライしました。結果が出るまで、いったいいくらくらい補助が出るのか見当がつかないのが不安でした。家庭によって状況が異なるのはわかりますが、目安くらいあったらよかったのに。

娘の受験した学校のFinancial Aidは、need basedの返済不要なscholarshipで、本人の学業成績とは無関係に、親の収入や資産、支出等を考慮して補助額が決まります。高校4年間、毎年申請して審査を受ける必要があります。大学の学費が後に控えている上に私達の老後もあるので、ここで余力を全て使い切ってしまうわけにはいきません。

ところが驚いたことに、この学校では約3割の家庭しか補助を受けていないようです。どれだけお金持ちが集まっているのでしょうか。。。それとも、ここ数年でアメリカに来たために、教育資金が十分たまっていない私達が例外なのでしょうか。

奨学金の申請のために、現在の年収、どの口座にいくら預金や投資があるか、家賃や食費、レジャー等も含めた年間の支出額などを入力、エビデンスをアップロードします。日本の口座は直接入力できないため、コメント欄に総額を入れました。もしTax Returnで算出していなかったら大変な作業でした。日本に持つ資産がどの程度勘案されるか、不安になります。

奨学金の額(が書いてあるドキュメントへのリンク)は合格発表の1時間後くらいに別メールで届きました。結果は、考えていた上限よりも1割ほど高い程度の自己負担でした。この額だと現金が目減りして行ってしまいますが、絶対に支払えない額というわけでもありません。日本に持つ資産がどの程度考慮されたのかわかりませんが、さすがにギリギリの線を狙ってきます。。。想定していた上限を少し超えてはいますが、これも投資と考えて観念することにします。効果的な投資になることを願っています。

4 出願プロセス

この学校の場合、まずは10-11月のvirtual open houseに参加することから始まります。現役生徒からの説明が中心で、どの子も利発そうです。娘もこの学校を気に入ったようです。数十ドルの費用を支払い、正式にアプライします。

11月に入り、現在通っている学校の先生に推薦状を依頼しました。英語の先生、数学の先生、校長または進路担当の先生からの分が必要です。オプションで、学校の先生に限らない大人一人の推薦状も受け付けてもらえます。娘は、ずっとプライベートレッスンをしていただいているバイオリンの先生(学校の音楽の先生)に依頼しました。進路担当の先生からはtranscript(成績)も送付していただきます。

次はオンラインインタビューです。最初に保護者が15分くらい、本人は30分くらいインタビュワーの先生と話しました。何を準備すればいいのか検討もつかないので、結局何もせずに臨みました。インタビュワーは英語の先生で、読書好きの娘と話が合ったようです。

インタビューが終わったらschool visitをスケジュールします。親子3人で行き、最初に学校を案内してもらいます。まるでアパートの建物のような、かなり小さな学校でした。校庭もありません。オープンハウスである生徒が「全員が全員と顔見知り」と言っていましたが、あながち大げさでもなさそうです。その後子供だけで授業に参加し、その場でライティングの課題が与えられました。何やら子供向けのポエムを読んで、それに対する質問が二つほどあったそうです。

その後、締切までに共通テストSSAT等の結果やstudent essayをポータルにアップロードし、先生たちが推薦状を提出してくれているかウオッチします。今回は一人の先生がアップロードしたものが認識されていない問題があり、なかなか解決されなかったので大変な思いをしました。

全て提出したら1ヶ月ほど結果を待ちます。結果はポータルとメールで通知されました。合格がわかったので、その日の予定をキャンセルしてお祝いのケーキを買いに行きました。

5 受験勉強

大学もそうですが、アメリカの高校は内申書や入学試験だけでは決まらず、student essayやインタビューが大きな判断ウエイトを占めるために、どう準備すべきなのかわからずに試行錯誤しました。

受験対策としての勉強はほとんどしませんでした。日本だと早慶等に特化した問題集があったりしますが、こちらでそういうものは見たことがありません。そもそも受験用参考書といったものが無いように思います。いつまでにこれだけやっておけばまあなんとか、という目安が存在しないのです。

結局は、比較的淡々と普段からやっている数学の勉強やバイオリンの練習、読書などを続けたことで合格につながりました。日本にいたときに中学受験準備をしたことでだいぶ助かったと思います。もともと読書好きでライティングは得意だったことと、ここ1,2年では AoPS のテキストとオンラインレッスン、高校への数学増刊(東京出版)が役に立った気がします。これらを真面目にやっていれば、SSATの数学はほぼ満点取れると思います。

なお、数学のテキストとして AoPS のものはオススメです。どれも分厚く、大きくて重いのですが、説明がとても丁寧で、基本から応用までカバーしています。参考書だけで進めるのが苦手な子はチャットベース(画期的!)のオンラインレッスンがよいペースメーカーになってくれると思います。(若干人を選ぶかもしれませんが。。)

amc8/10、mathcounts、mathleague(ニューイングランド限定)等のテストを受けて自分の実力を確認すると共に、楽しみの要素(mathcountsはコンペティション形式)を勉強に加えていくことも良いかもしれません。

student essayは短いのですが、書いてすぐに出そうとする娘を抑えて、2,3週間推敲させました。私もチェックしましたが、大した指摘はしません(できません)でした。

6 終わりに

アメリカの私立高校受験を検討しはじめた時、ネット上にはあまり欲しい情報が見つかりませんでした。今回、娘の受験が一段落したところで、体験談のようなものを書いてみました。少しでもどなたかの参考になればうれしいです。