Table of Contents
1 はじめに
今年の夏も一時帰国して何冊か日本語の本を買いました。まだ読み途中ですが、とりあえず。
2 読んだ本
2.1 上を向いてアルコール 小田嶋隆
紀伊國屋書店新宿本店で見つけて購入。去年亡くなるまで、小田嶋氏の文章を読むためにTwitterをやり、日経BPのサイトをチェックしていました。
残念なことに、なるほどと思わせる分析があまり出てこないまま、あっという間に読み終わってしまいました。一点だけ、人は物事を過度に単純化したがる、という指摘に共感しました。個人的に、最近酒を飲みすぎているなと思った時に読み返せるように、手元においておきたいと思います。
2.2 ハックルベリー・フィンのアメリカ 亀井俊介
ハックルベリー・フィンは高校時代に課題図書で読んで「面白かった」という記憶だけが残っています。他には不思議な少年やトム・ソーヤーを読みましが、内容はすっかり忘れてしまいました。コネティカット州のマーク・トゥエイン・ハウスにも行きました。
自由を愛するハックルベリー・フィンをアメリカ人の原型としてとらえ、以降の小説にその影響を見ていくといった内容でしたが、私が住んでいるマサチューセッツが特殊なせいか、いまひとつ共感できませんでした。
2.3 人間の建設 小林秀雄、岡潔
一度読んでみたいと思っていた小林秀雄が新潮文庫の100冊として並んでいたので購入。知の巨人の言葉は残念ながら中身が無く、興味が持てなかったです。言い切るならばもう少し根拠を示してほしかった。「あの人は偉いのですか」「偉いです」のような会話は本当に意味がない。
テーマは広く浅く、ドストエフスキーやトルストイからアインシュタイン、ゴッホ、プラトンなど。興味をそそられるような掘り下げはほとんど無く、次から次へと話題が変わります。
この対談集を例えば英語に翻訳して出版しても、(中身が無いので)評判にならないと思います。日本的ペダンティックに満ちたこの本を、新潮文庫の100冊に入れた理由が知りたい。
数学者岡潔のことは知りませんでしたが、興味の広さと知識の深さに感心しました。
2.4 反知性主義 森本あんり
面白く読みました。最後まで読んだのに、知性主義が何なのかぼんやりしたままでしたが、反知性主義は知性主義と権力が結びつくこと(エスタブリッシュメント?)への反動ということはわかりました。トランプのようなありえない人が大統領になってしまう理由がやっとわかってきた気がします。
著者の名前に見覚えがあった気がした理由は、あとがきで「小田嶋隆」が言及されていたことで解決しました。小田嶋氏のコラムかなにかで目にしていたのだと思います。小中高と同級生だったそうで。
2.5 アメリカの政党政治 岡山 裕
借りた本なのでトクヴィルを中断してこちらを先に読みました。アメリカ建国時に遡ってアメリカ政党の変遷を説明しています。最初の方は知らない人物ばかり登場するので読みづらいですが、後半読みやすくなります。オバマやトランプまで詳しく説明されているので、比較的最近のアメリカの、疑問に思っていた状況を読み解くヒントになりました。
アメリカの政党は柔構造であり、日本やその他の国の政党とは違う。利権団体などの支持基盤の違いが政策への違いにつながっているのであって、政策については、しばらく前までは党内の差の方が大きかった。100年前と現在で、民主党と共和党が抑えている州が完全に逆になっている(例えば100年前は南部州は民主党支持だった)。。。といったあたりにはなるほど、と思いました。
なかなかの良書でした。
2.6 東京奇譚集 村上春樹
5編からなる短編集。村上春樹は昔よく読んでいたのですが、しばらく日本語の本を読まなかったせいもあって、最後に読んだのは1Q84でした。最近の長編は冊数がやたらと多く、一時帰国の際にあまり買う気になりませんでしたが、本書は短編集ということで、久々に手にとって面白く読みました。
一番面白かったのは最後の「品川猿」でした。捕まえた猿が日本語を話しているのに、ごく普通の猿であるかのように話が進みます。こういった不思議でとぼけたところが好きです。
村上春樹はしばらく前にマサチューセッツのケンブリッジにいて、そこで「ねじまき鳥クロニクル」を執筆したとのこと。ずっと、イギリスのケンブリッジかと勘違いしていました。私はケンブリッジ市の隣町ブルックラインに住んでいて、村上春樹では「ねじまき鳥クロニクル」が一番好きな作品です。なんだか奇遇だなぁ。
2.7 アメリカのデモクラシー トクヴィル
アメリカに住んでいるので、アメリカにとても興味があります。一見論理的で効率を追求している国のようで、どうしてGeorge W. Bushやトランプのような大統領が出てしまうのか。対中国にしろ対ロシアにしろ、アメリカや同盟諸国の国益に反する(ように見える)ことばかりするのか。デモクラシーと自由を世界中で布教してまわるのは何故か。
200年も前の本なのに、トクヴィルの分析は今でも当てはまることが多く、アメリカを理解するためには必読と思いました。特に第1巻上と第2巻上が興味深かったです。これまでの疑問に対する(一つの)考え方を提示してくれました。第2巻下は話が抽象的になって、最後は若干だれました。
2.8 色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年 村上春樹
村上春樹が抜群のストーリーテラーだということを再確認しました。タイトルが地味なためか、世間ではあまり人気が無さそうですが、ページをめくるのももどかしいくらい、久々に夢中になって読みました。
ストーリーのあらを探せばいくつか見つかりますが、村上春樹の本はあまり分析せずにさらっと読んでしまうのがいいように思います。